2010-02-06

技術力の向上と保守力の低下

先月末起こった東海道新幹線の架線切断事故には非常に驚かされた。
asahi.com(朝日新聞社):東海道新幹線のボルト締め忘れ、ベテラン社員も見逃す

週末のダイヤを大混乱に陥れた東海道新幹線の停電事故は、架線でも車両でもなく、作業員のボルト付け忘れという単純な人為ミスが原因だった。...同時に交換を行った6号車のパンタグラフには付いていた確認マークが、12号車には付いておらず、付け忘れであることがはっきりした。...

昔、学校の古典で徒然草の「高名の木登り」の話を学んだ。難しい事よりも容易な事をする時こそ気を緩めてはいけないと言う話である。

ボルトを締める作業は、電気配線よりも気を遣わなくても済む作業だろうと想像できる。
ボルトが締めていない状態でも1000キロ走れたのは、偶然と言えば偶然かも知れないが、パンタグラフ部品の設計と製造が優れていたからこそだと思う。
パンタグラフがボルトへの負荷が少なければ、ボルトの劣化が遅くなり、検査や交換の頻度が少なくなる。
そんな風に製造技術力の向上が、保守担当者の気の緩みを招いた事例だと思う。

新聞記事には、チェックシート等によるミス防止がなかったとある。しかし、チェックシートも万能ではないし、場合によってはチェックシートの記載事項以外への配慮の不足を招きかねない。

鉄道に限らず、大きなトラブルの大半は些細な人的ミスの結果である。
対処療法的にチェックシートに頼るのではなく、如何に作業中の気の緩みを無くせるかを考えるべきだと思う。
また、連続した緊張は心身への大きな負担なので十分な休憩時間も必要になるかも知れない。
チェック作業が増える事で逆に作業者の負担が増え、ミスを誘発する事が無いように願っている。

この問題は鉄道会社だけの問題ではない。人間は機械ではない。業務の効率化という旗印の下、日常的に精神的に余裕のない状態で仕事をせざるを得ない人が多くなっている気がする。

それにつけても、死者や住宅街への火事が出なかった事は本当に不幸中の幸いだった。