2013-02-23

SL列車であおなみ線の活性化を目指そう


先日のSLあおなみ号の実験走行は、名古屋市の河村市長の発案が実現できるか調査する為のイベントであった。
河村市長の構想は、名古屋市科学館で保存されているB6を始め、世界各地の機関車を動態復元して、あおなみ線で走らせる。その事により、名古屋をSLの聖地と化し、あおなみ線を活性化させると言うものである。

しかし、河村市長の構想実現は非常に難しい。

・高架等の強度設計はSL列車が前提でない為、安全性に問題がある。
・車両限界の都合上、入線できる車輌の大きさが限られる。
・各駅にある線路転落防止のホームドアに対応できる客車の新造が必要。
・騒音や煤煙や心ない鉄道ファン等により、沿線住民の生活に影響が出る。
・給水や給炭、転車台などの蒸機用の設備がない。
・名古屋に蒸機の運行から保守まで扱える人材が無い。
...などの問題点としてある。

あおなみ線の終着地の金城ふ頭地区に、数年後、レゴランドがオープンする予定である。


そうなれば、既存のリニア鉄道館と合わせ名古屋有数のテーマパークゾーンとなり、あおなみ線にSL列車を走らせなくても、あおなみ線の利用者数は十分上がるだろう。
逆に、列車数を増やそうとしても、電車より加速や減速が遅いSL列車が走っているとダイヤ編成が難しくなる。つまり、レゴランド等による利用者数アップのチャンスをSL列車が妨害する可能性すらある。

では、SL列車であおなみ線を活性化できないのだろうか。

私は次のような活性化案を考えてみた。

1. SL列車は、金城ふ頭地区を周回する新設の専用線で走らせる。
( あおなみ線では走らせない。)
2. 機関車及び客車は、新造とし福島県の協三工業に製造委託する。
( 静態機の動態復元はしない。)
3. 運行や保守の人材育成は、SL列車を運行している「愛知こどもの国」で実施する。


上記1に関しては、あおなみ線の高架部の補強工事やホームドア対応、ダイヤ編成などの問題を回避できる。

上記2に関しては、東日本大震災後、熱烈な鉄道ファンである会社社長の依頼により協三工業では22年ぶりに小型蒸機を製造した。その製造ノウハウがある今から数年以内なら新規製造の依頼も可能だろう。
特定企業とは言え、震災被災地への支援にも繋がると思う。
( 参考:22年ぶりに新製蒸気機関車誕生。(編集長敬白) )


上記3に関しては、愛知こどもの国では協三工業製の小型蒸機「こども汽車」を現在も運行しており、運行や保守の技術が維持されている。
金城ふ頭エリアでの蒸機として協三工業製を採用すれば、愛知こどもの国での運行や保守の技術が活かせると考えられる。
愛知こどもの国は名古屋市ではなく愛知県の出資による遊園地であるが、利益優先の私企業ではないから、人材育成の為の協力は得やすいだろう。


また、愛知こどもの国では近年収益が悪い為、閉鎖が検討されていると聞く。
万が一、その様な事態になった場合、「こども汽車」の車輌や運行スタッフを名古屋市側に引き継ぐ事も可能である。

協三工業の小型機関車はナローゲージなので、SL列車同士がすれ違いや列車交換ができるように複線にしても敷地面積や建設費はそれ程問題にならないと思う。
SL列車は各地で運行されているが、SL列車同士がすれ違うような運行はほとんど無い。SL列車の複線での常時運行は価値があると思う。
また全区間複線ではなく一部複線にしてタブレット交換シーンを再現するのも楽しいだろう。

確かに国鉄制式の機関車なら見栄えするが、どう頑張ってもSLやまぐち号や梅小路蒸気機関車館には及ばない。
SLの聖地化を目指すのではなく、割り切りと言うか目指す方向の転換が必要だと思う。
家族連れでSL列車に乗った後、鉄道ファンのお父さんはリニア鉄道館、お母さんと子供達はレゴランドってパターンもありだと思う。

SLあおなみ号の実験走行の評価が来月中に発表されるが、河村市長や名古屋市がどう動くか注目してゆきたい。