2012-01-14

鉄道会社経営者の責任

JR福知山線脱線事故に関するJR西日本の前社長らの刑事責任を問う裁判について神戸地裁は無罪判決を出した。
福知山線脱線事故:JR西前社長に無罪判決…神戸地裁:毎日新聞

乗客106人が死亡し多数が負傷した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故(05年4月)で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長、山崎正夫被告(68)に対し、神戸地裁は11日、無罪(求刑・禁錮3年)を言い渡した。鉄道事故を巡り、巨大事業者の経営幹部に刑事罰を科せるかが焦点だったが、岡田信(まこと)裁判長は「JR西に多数存在するカーブの中から、現場カーブの脱線転覆の危険性を認識できたとは認められない」と、事故の予見可能性を認めなかった。...

法治国家の日本として極当然な判決結果だと私は感じる。
前社長が安全対策予算を認めなかった等の安全対策を妨害した確たる証拠がない限り、例え黒に近いグレーであっても有罪にしないのが日本の法律であり、日本は法律を守る法治国家である。
事故で亡くなった方々や遺族の方々の気持ちを思うとあまり強く言えないのであるが、感情で有罪・無罪が決まるとしたら、独裁者国家と何も変わらない。
( もちろん独裁者国家が悪とは限らないが、独裁者の気持ちひとつで国や国民の生活が大きく変わってしまう。)

この件に関してマスコミ各社は触れていないが、そもそも何故、国鉄が分割民営化されたのかを考えてみる必要がある。
理由はいくつもあるが、大きな理由のひとつに巨大な累積赤字の解消がある。
累積赤字の返済を民営化したJR各社に委ねたのだから、JR各社としては採算重視の経営方針を取らざるを得ない。

この現場にATSがあれば事故を防げたはずと言う意見を良く目にする。
それは確かにそうかも知れない。しかし、それを言い出したら切りがなくなる。
ATS装置はタダでない。
ATSがあればと主張する人は、赤字は気にせず、無限に国民の税金を投入しても良いから、とにかくATSを設置すべきと主張するのだろうか。

事故シミュレーションして、危ない箇所だけATSを設置すれば良いと意見もあるだろう。
昔シミュレーションを少しかじっただけの知識であるが、私自身はシミュレーションは重要な参考資料となり得るが、絶対的に信頼できるものとは思えない。

鉄道事故のようにシミュレーションのパラメータ(列車速度、列車重量、重量の分布、乗客数、乗客の分布、風速、気温、等々)が非常に多い場合は、パラメータが少し違うだけで、全然異なる結果が出てる事が珍しくない。
また、解析技術はどんどん向上するだろうから、現在のシミュレーションでは「安全」でも10年後は「やや危険」と判定されるかも知れない。

現場の急カーブのレールが敷設された当時、前社長が鉄道本部長だったから前社長は容易に危険が認識できたはずと言う意見もナンセンスだと私は感じる。
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」って有名なセリフがある。
JR西日本の鉄道本部長は、管轄の膨大な路線長の全路線を隈無く視察できるほど暇なのだろうか。
福知山線事故現場が急カーブになってすぐに事故が起きた訳ではないし、運転士が感覚的に危険だと感じても、それが数値化された情報として報告されなければ、会議室では「危険」とは認識されないだろう。
「危険」がなければ、民営化時に負った累積赤字分の債務返済の為に、とにかくコスト削減に努めるのが民間企業の経営者の責務である。

それらの観点からすると、JR西日本の前社長の刑事的な責任はなく、無罪判決は当然だと私は考えた。

しかし、それは法律という最低限のモラルの問題にしか過ぎない。
これはJR西日本に限った話ではなく、多くの大企業や政治家、官僚、公務員に言える話であるが、自社や自分の社会的な地位に見合った社会的な貢献を行っているかを日々点検する気持ちが薄れていないだろうか。

一般国民は、労働と納税、次世代の教育、各種法律への遵守程度で十分かもしれないが、大企業や政治家、官僚や公務員には、社会の顔や公僕として、国民に尊敬されるような行動規範が求められるのではと思う。
そういう観点で見ると、政府、官僚、大手鉄道会社の経営陣の安全に対する努力が残念ながらいまひとつ伝わってこない。

政府や国土交通省は鉄道各社の安全対策の促進にどのように支援しているのだろうか?
鉄道会社は現場の危険情報をどのように収集しているのだろうか?

安全対策はお金はかかるが収益向上に繋がるものではないから、企業任せにせず、国も積極的に支援すべき事項だと思う。
例えば、国が助成金を支出して、国の研究機関・大学と鉄道会社の共同研究で、運転士や乗務員の漠然として表現できない危機感・不安感と列車運行の危険性の相関を簡単に数値化できる手法が開発できれば、鉄道各社の安全対策の優先順位の決定に貢献できるだろう。
安全対策に対して国が助成金制度を設ける場合、助成金額の算定基準として利用できれば、税金を効率よく活用できるかも知れない。

走行時に運転士らが感じる列車の振動や加速度、視界の様子、運転士の個人差などと数値化が難しい研究対象であるが、国や国交省も法律を作ったから、あとはよろしくとばかりに安全対策を民間企業に丸投げせず、積極的に関わって欲しいと思う。

もちろん、納税者である一般国民も「自分は鉄道を利用しないから、そんな事に税金投入するな」と脊髄反射的に拒否せず、家族や親戚、知人が事故に巻き込まれないようにと願って、国の支援も応援できるような気持ちのゆとりを持てるといいなと思う。

2012-01-03

2012年 蒸機詣で

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

この正月は大井川鐵道と愛知子どもの国に蒸機詣でに行って参りました。

大井川鐵道では、今年の元旦のSL列車は重連運転でした。


なかなか見られない重連運転と言う事で正月早々、大井川鐵道に向かいました。
過去の正月と比べて今年のSL列車は乗客が多く、お座敷客車を含めて客車が7輌という繁忙期並の長編成。
線路際には多くのファンがカメラを構えており、重連運転への注目度の高さを感じました。



終着の千頭駅ではSL列車乗客へのお年玉プレゼントの発表があり、駅前では地元の方による太鼓演奏がありました。
お年玉プレゼントは残念ながら外れ、蒸機撮影していた為、太鼓演奏は響いてくる太鼓の音を聞くのみでした。



上りのSL列車を川根温泉付近で撮影する為、一足先に電車で川根温泉笹間渡駅に向かいました。温泉に軽く浸かり河原に下りてSL列車を待ちました。
汽笛が聞こえSL列車がやってくる。
カメラを構えて。。。あれ、重連じゃない???プッシュプル???
列車通過後、重連を期待していた周りの人達も落胆の声を上げていました。
あとで聞いた所、227号機は途中で調子が悪くなった為、重連運転できなくなったとの事。
大井川鐵道と沿線観光の収入の要(かなめ)である機関車のひとつなので心配です。
故障が深刻なものでありませんように!!
尚、曇天で白煙が消え、コンパクトデジカメなのに流し撮りせず、被写体ブレした写真しか撮れていないのは、重連でなかった事による動揺の為で無く、単に私が何も考えていなかった為です。
終わりよければ全て良しとなるように、気を引き締めねば。

翌日2日は、存続が危惧されている愛知子どもの国に行って参りました。


ここで子ども汽車として走っているタンク機関車「まつかぜ」「しおかぜ」、テンダー型電源車及び客車は、昭和49年に福島県の協三工業で作られた車輌です。
特に機関車は石炭(ピッチ練炭)を燃料とする本物の蒸気機関車。
三河湾からの冷たい海風が吹く中、この日の牽引機「まつかぜ」は5両の客車を引っ張って元気よく走っていました。
今年が、この「まつかぜ」の故郷である福島県をはじめとする東日本大震災の被災地が元気よく復興への道を走ってゆく年になる事を願っています。