2011-06-26

JR北海道の問題から社会を考える

特急全焼事故以外にもJR北海道に関して重大な事故や問題の報道が目立っているように感じる。

JR北海道“居眠り運転士”乗客写メで告発!:スポニチ

...男性運転士(26)が運転席で居眠りするのを乗客の男性が目撃。運転士からの報告はなかったが、男性が同日中に同社へメールで指摘し発覚した。男性は、居眠り運転の一部始終を運転席後方の窓から携帯電話で撮影。...男性のメールには「怖い思いをした」との記述もあった。...運転士は、1分間何も運転操作をしないと鳴る警告ブザーで目を覚まし、慌てた様子で腕を回して信号を確認。...運転士は7日午後から8日午前までの泊まり勤務で、5時間の休養を取っていたが「寝付きが悪くてなかなか寝られなかった」と話している。...


運転士の異常に対応するATSシステムがあるので、居眠り運転しても重大事故に至らないように設計されているが、列車の安全運行を脅かしかねない事故である。
この報道記事を読んで感じた事がいくつかあった。

共有が不十分なヒヤリハット情報
JR西日本の福知山線転覆脱線事故で問題視された社内情報共有の在り方が、少なくともJR北海道に関して不十分ではないかと感じられる。
大事故の影には多くのヒヤリハットが存在する。記事の運転士もうたた寝してしまったが、ATSシステムのおかげで事故に至らず、目を覚まして運転を再開できた。
この運転士は、ブザー音で目を覚ました瞬間、ヒヤッとしたのではないだろうか。
運転士から社に報告されていない所を見ると、ヒヤッとする事態を全社的に吸い上げて、職員の勤務環境を改善する取り組みが必要なのに不十分であると考えられる。
事故調査委員会と同様、重大事故に至っていない場合に限り、ヒヤリハット報告した内容に関しての処分を行わない代わりに、積極的に報告させる仕組み作りが必要だと感じられる。

ワガママな社会
この列車運転士に限らず、医師も同様(またはそれ以上)であるが、人件費を圧縮する為に最低限の人間で業務を進めようとする結果、一人一人の余裕がなくなっている。
人の命を預かる仕事なのに寝付きが悪いと言っても確保できた睡眠時間が5時間というのは短すぎる。
その一方、鉄道会社がインフラ企業と言えども、利益を追求する私企業である。
もし運転士、車掌や保線作業員などの安全運行を支える人達の勤務に余裕を持たせる為には鉄道運賃などの料金の上昇は避けられない。
料金が上がっても鉄道利用者が減らなければ問題ないだろうが、実際にはそうでない。
社会の多くは、品質向上と価格低下の同時実現という難題を企業に求める。
企業側には、その難題解決への努力を惜しんで欲しくないが、論理的に考えず一方的に難題を押しつけるばかりの社会は、ワガママ過ぎるのではないかと感じる。

そして、社会の過ぎたワガママを助長してきたのは、マスコミの責任もあると思う。
マスコミ各社には事件があった時だけ被疑者の悪い点だけを大々的に報道するのではなく、浅くて良いので多くのインフラ企業の経営状況をかみ砕いて報道して欲しい。
ちょうど、福島原発事故以降、東電管内の電気使用量状況がネット上では毎日毎時掲載され、社会の節電意識を高めているのと動揺、インフラ会社の社内状況や経営事情を3分程度で読める情報にできれば、"料金が高くなったから、もう利用しない"と言う短絡的な思考が働きにくくなり、回り回って、従業員の勤務環境改善に繋がるのではないかと考えている。

思考力のない人間
ワガママな社会の問題と重複するが、思考力のない人間が増えている事に危機感を覚える。
今回運転士は単なる居眠り運転で、ATSシステムのブザー音で目醒めたので大事なかったが、もし心筋梗塞など突発的な疾患により気を失っていた場合はどうだったのだろう。
車両の非常ブザーは、乗客の非常だけを伝える為のブザーではない。運転士の異常を見つけたら、非常ブザー等と使って車掌に通報すべきである。ワンマンカーだったら、運転席後ろのガラス戸を叩くなどして運転士の意識の回復を図るべきだろう。
列車を運転しているのは運転士である。( 自動運転の列車を除く )
運転士に命を預けている事に考えが及ばす、運転士の様子をただビデオ撮影しているだけという男性乗客の危機感というか思考力の無さには悲しくなってしまう。怖かったら、ビデオ撮影しているのではなく、非常ブザーで助けを呼ぶ事が先ではないか?

これほどでは無いが、何を考えているんだろうと思うような人を日常生活で多く見かけるようになった。それも若者ではなく、団塊の世代以上の年配の方が多い。
まぁ、それなりの年配ばかりの政治家が十分な考え無しに原発停止要請するし、それに諸手を挙げて賛同するマスコミが多いのを見ていると、それが普通の日本人であって、私のように考えたりする人や若者が変な日本人なのかも知れないけど。